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あさりん店主

人はなぜ「孤独」なのか?その1

こんにちは。あさりん店主浅野です。


少しく躓いているうちに「熱い暑い夏」もあっという間に過ぎて、もはや冬になってしまいそうな今日この頃いかがお過ごしですか?


昨日テレビをぼんやり見ていたらイモトアヤコが結婚するとか言ってました。お相手は一緒に世界を回ったり登山したりしていた番組ディレクターとのこと。それをみて店主は驚くよりも「やっぱりね」とある確信を深めましたよ。


というのもここ半年ぐらい「人はなぜ孤独なのか?」あるいは「孤独を感じるのか?」ということをずっと考えていたんです。そして、それに伴って「友達ってなんだろう?」ってのも。


結論から言うと、人の存在の本質は「記憶=メモリー」だということです。そしてそのメモリーのデータはその個人に固有のもの、一つとして同一のものはないということです。



人は生まれてから死ぬまで様々な経験をして、様々な感情を覚え、それを記憶して頭の中に積み重ねていきます。その記憶の蓄積こそが「その人の人格」そのものだと思うわけです。


そう考え始めたきっかけがあります。


今年の春先、定休日にやたら温泉に行ってのんびり過ごすことが多かったのですが、そんなある日、仙台秋保温泉にある日本庭園に迷い込んだんです。風呂上がりの体を冷やしがてら1時間ほどかけてその庭園をのんびり散策していたんですが最後に休んだ池に鯉がいたんですね。どうやら餌付けされているらしく人影を見ると逃げるどころかたくさんの鯉たちが口をパクパクさせながら集まってくるわけです。


見上げれば秋保の低い山稜の上を春先の強風が駆け抜けていくのが、まるで山の木々がスタジアムの観衆のウェーブのように見えています。ちょっとした過去の経験からそれを見て気圧配置や天気図まで想像できます。鯉たちはなにももらえないのが分かったのか、再び散り散りに泳ぎ去っていきました。


その鯉にいたく心を動かされてしまった。感動といってもいいくらいでした。でも理由は自分でもよくわからない。物欲しげに集まる鯉の浅ましさに自分を重ねたのか、それとも小さな庭園を愛でる年になった自分を哀れんだのか、よくわからない。ましてやその気持ちを人に伝えるにことなど絶対にできないと思いました。


「誰にも理解されることのない感動を抱いて人は生きてく」



と、あらためて庭園を見回すと、その箱庭の風景のパーツ一つ一つが自分の過ごしてきた日本各地の景色を思い起こさせることに気づきました。信州の北アルプスの連なり、京都東山の稜線、沖縄の海、北海道の平原等々あらゆるものが見て取れます。いやもちろん、そういう意図で作られているわけありませんよ、絶対。そんなわけがない。単に僕が僕の心の中の風景、記憶を庭園のあちこちに投影しているに過ぎないわけです。


逆に言えば、この庭園の風景と池の鯉でこんな風に感動できるのは世界で僕ただ一人であり、唯一無二の存在なわけです。なぜなら、その時の感動と僕が生きてきた記憶は緻密につながっているからです。ただ、どこがどうつながっているのかは当の僕本人にも感知しえない部分がある。


もし僕がその感動を理解し、また人に伝えるためには、もう一度数十年の僕の人生を1分1秒逃さず追体験する必要があります。そのうえ今現在の感動は過去に僕が感じた別の感動や口惜しさ、悲哀、などに影響されているかもしれず、当然それは複層的に積み重ねられているんです。


無理ですよね。


文学者なら長々と小説を書くのでしょう。長編大河小説のエンディングが池の鯉を愛でるところで終わったりするのはそういうことなのかもしれませんね。最後の一風景を説明するためにそれ以前のページがすべて費やされていることになります。


言葉を超越して表現したければ絵をかいたり歌にしたりするのでしょうが、こちらも受け手が訓練されていないと苦しい。共通する社会体験も求められるかもしれない。


つまり文学的才能もピアノで弾き語る技術もない我々は、いや、もしそういう能力があったとしても、人は自身の体験と記憶に閉じ込められたまま一生を過ごすのです。だって自分と全く同じ人生を送る人など絶対に一人もいなんだから。物理的に無理です。たとえ双子でもトイレには一人で行くでしょうしね。


完璧に理解しあえるなんてことはないわけです。


「人は一人で生まれ、一人で死んでいく」とはそういうことでしょう。


孤独なんです。絶対的に孤独なのが人という生き物です。


身もふたもない結論になってしまいました。ここで終わると泣いてしまいそうなので、次の投稿では「じゃあ友達ってなによ?」「みんなで生きるって何?」って話にしたいと思います。多少は希望が持てるかもしれません、たぶん。






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